グルカゴン療法で成功した重度のβ遮断薬過剰投与の2例を紹介した。 グルカゴンの作用機序、作用発現と持続時間、用法・用量、コストと入手方法、副作用など、深部β遮断薬の心血管抑制を回復させる効果について概説した。 β遮断薬の過量投与による医学的合併症には、低血圧、徐脈、心不全、房室伝導障害、気管支痙攣、そして時には痙攣がある。 アトロピンとイソプロテレノールは、β遮断薬の過量投与による徐脈と低血圧を回復させるのに一貫性がない。 グルカゴンは心拍数と心筋収縮力を増加させ、房室伝導を改善する。 これらの作用は、β受容体遮断薬の存在によって変化しない。 このことは、グルカゴンの作用機序がβ-アドレナリン受容体部位を迂回する可能性を示唆している。 グルカゴンはβ受容体部位を迂回する可能性があるため、深部β遮断薬中毒の代替療法として考えることができる。 重度のβ遮断症を回復させるために必要なグルカゴンの用量は、50マイクログラム/kgの静脈内ロード用量と、それに続く1-15mg/hの持続点滴で、患者の反応に応じて漸増させる。 グルカゴン投与患者は、吐き気、嘔吐、低カリウム血症、高血糖の副作用をモニターする必要がある。 グルカゴンは高価であり、入手が困難であることが、今後の臨床応用を阻む唯一の要因であると思われる。

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