回文配列とは、二本鎖のDNAまたはRNA分子において、一方の鎖のある方向(例えば5’から3’)に読む配列と、相補鎖の反対方向(例えば5’から3’)に読む配列が一致する核酸配列のことである。
A:回文、B:ループ、C:茎
遺伝学の文脈における回文の意味は、単語や文に用いられる定義と少し異なる。 二重らせんは、反対方向に走るヌクレオチドの対になった反平行鎖で形成され、ヌクレオチドは常に同じように対になっているので(DNAではアデニン(A)とチミン(T)、RNAではウラシル(U)、シトシン(C)とグアニン(G))、ある(一本鎖)ヌクレオチド配列がその逆補数と等しければ回文と言われる。 例えば、DNA配列ACCTAGGTは、そのヌクレオチドごとの補体がTGGATCCAであり、補体のヌクレオチドの順序を逆にすると元の配列になるので回文となる。 ヘアピンの幹の部分は、ヘアピン全体が同じ(一本)核酸の鎖の一部であるため、擬似二本鎖の部分となる。 パリンドロームモチーフは、ほとんどのゲノムや遺伝子の命令セットに含まれています。 特に、バクテリアの染色体や、染色体上に散在するBIME(Bacterial Interspersed Mosaic Element)と呼ばれる部分で研究されている。 2008年、ゲノム解読プロジェクトにより、ヒトのX染色体およびY染色体の大部分が回文として配列されていることが発見されました。 回文構造は、Y染色体の片側が損傷したときに中央で折れ曲がって修復することを可能にします。
回文は、タンパク質を構成するペプチド配列にも頻繁に見られるようですが、タンパク質機能における役割は明確にはわかっていません。 回文は複雑度の低い配列に多く含まれることから、ペプチドに回文が存在することは、タンパク質に複雑度の低い領域が多いことと関係があるかもしれないと言われている。 また、回文配列がαヘリックスや蛋白質/蛋白質複合体を形成する傾向とも関係があるのかもしれない。